2024年 面白かった本

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2024年に読んだ本の中から、面白かったなと思ったものをピックアップしたいと思います。
※2024年に発行された本、というわけではありません。
※ミステリーや推理小説を好んで読んでいるので、そちらに偏ってます。

さて、2024私のベストは「お梅は呪いたい」でした!

「お梅は呪いたい」には続編が出ておりまして、本屋で見たときにすぐに買ってしまいました。早々に読んでしまうのは惜しいので、じっくりと楽しみたいと思います。では以下感想文などなど・・

『お梅は呪いたい』祥伝社文庫 『殺意の対談』角川文庫 『指名手配作家』 双葉社 『三十年後の俺』光文社文庫 藤崎翔

元お笑い芸人の作家さんでして、どの作品もかなり安心して読めます。面白いです。特に「お梅は呪いたい」は面白くてびっくりました。
・お梅は呪いたい
呪いの人形であるお梅が500年ぶりに箱から出されて復活し、現代の人間を呪おうとするが、全くうまくいかないという話。お梅の独白が面白いのと、周りの人々がお梅の思惑とは別に幸せになっていき、最後にほぼ全員がつながる展開がお見事。
・殺意の対談
各エピソードは短編集なのですが、登場人物たちが見事につながっていき、残った人たちは最後全員爆死する、という話。こちらも各キャラクターたちの独白が見事です。
・指名手配作家
うっかり突き飛ばして編集者を死なせてしまい、逃亡する作家が、自殺しようとした女性を助け、いっしょに住むようになる。途中で様々な困難があるが、二人で乗り越え、ピンチをチャンスに変え、成功をおさめてゆく、という物語。最終的は捕まってしまうのだが、最初は冷たかった周りの人々が全て味方してくれる、という下りは泣けます。最終エピソードで、この本自体が、その12才になる息子が、両親の日記をもとに書いた、という設定が分かり、いやはや見事です。
・三十年後の俺
短編集。どの作品もいいです。人生最後に魔球を完成させる「伝説のピッチャー」、成仏までの過程をえがく「心霊昨今」、デーモン小暮閣下のようないでたちで政治をする「比例区は悪魔と書くのだ人間ども」(原題)、父親と同じことを息子にもする「三十年後の俺」。

その他に、
・こんにちは刑事(でか)ちゃん 中公文庫
赤ん坊の体を借りて独白が続く。ラストに向けて感動します。巻末のネタなんですが、「こんにちは警察犬(ワン)ちゃん」も読みたい!
・神様の裏の顔 角川文庫
作者のデビュー作です。すごくいい先生が亡くなり、その葬儀の場で登場人物たちによって神様のような先生の裏の顔が明かされる、、が実は、、という話。
・お隣さんが殺し屋さん  角川文庫
隣が殺し屋というのは、そういうこと?!と 最終盤でひっくり返されます。学園生活が長く描かれているんですが、そこには伏線が多数ありました。
・時間を止めてみたんだが 講談社文庫
変な顔をして息を止めることで時間を止められることを知った主人公と、周りで起こる騒動、時間を止めて人を救う、という話で、ライトノベルです。
・逆転泥棒 双葉文庫
現在パートと回想パートが交互に続くんですが、やたら長く、なぜ延々と続くのか、と思っていたら、最終章で、それぞれ別人だった、という種明かしがされます(そのおかけでもう一度最初から読み直して確認する羽目になりました。。。)泥棒が実は医者の息子の方で、医者が実は貧乏人の方だった、ということでそれは確かに逆転なんですけど、逆転泥棒という題は少し違うかなと思います。原題の「あなたに会えて困った」のほうが正しいですね。最後は作者らしいハッピーエンドです。
・OJOGIWA ポプラ社
題名がローマ字なのはそういう理由からか! というのが後になって分かります。自殺志願者が集まって自殺しようとしたら殺人事件を目撃し、その犯人から次々に殺害されるという、作者らしからぬハードな話だなと思って読んでいたら、どんでん返しで、作者らしい終わり方となります。
・読心刑事・神尾瑠美 双葉文庫
超能力テレパスを持つため、犯人が一発で分かるという設定。犯人は分かるのだが、証拠がない、という章や、連続殺人鬼に拉致されてあわや、という章などバリエーション豊か。テレパスを持つということを犯人が知っている、などさらに膨らませる余地はおおいにありそう。

『地雷グリコ』KADOKAWA 『11文字の檻』創元推理文庫 青崎有吾

次に面白かったのが「地雷グリコ」ですね。多くの賞を受賞していますが、確かにその賞にふさわしいと思います。誰でも知っているグリコやじゃんけん、だるまさんがころんだなどで、アカギのような心理戦が繰り広げられます。どうやって相手を倒したのか、各エピソードは圧巻です。「11文字の檻」は短編集で、いずれも物語はテイストが異なっていて個性があり、この作家さんは幅が広いなと思います。特に、今回書き下ろしの「11文字の檻」がその中でも面白かったです。11文字を当てると牢屋から出られるという設定で、それをいかにして当て、さらに看守をあっと言わせるか、展開がお見事です。

『処刑台広場の女』ハヤカワ・ミステリ文庫 マーティン・エドワーズ

物語は少女の日記から始まり、その少女はあくどい女に殺されているという話なんですが、途中で、もしや入れ替わってる? と気づき、そこまでの展開と、そこからの展開で一気に読ませます。
話の中核は、少年少女をもてあそぶ(孤児院が供給源)悪い集団がありまして、そのグループを壊滅する(関係者が次々と死ぬ)という話です。
この日記の少女であった女性探偵が、この後どう活躍していくのか、続編もあるようなので気になりますね。

『逆ソクラテス』集英社 伊坂幸太郎

短編集です。いい言葉がたくさんあったので、メモとして残したいと思います。
「僕はそうは思わない」逆ソクラテス
「相手によって態度を変えることほど、格好悪いことはない」非オプティマス
「もし、平気で他人に迷惑をかける人がいたら、心の中でそっと思っておくといい。可哀想にって」非オプティマス
「バスケの最後の1分が永遠なんだから、僕たちの人生の残りは、あんたのだって、余裕で、永遠だよ」アンスポーツマンライク
「誰かを馬鹿にした人は、将来、自分が成功した時に全部、晒されちゃうよ」逆ワシントン

『スペース金融道』河出書房新社 宮内悠介

銀河内で借金の取り立てをしていて、アンドロイドの3箇条とか、何万光年も離れているので流れてくる社長の講話は何万年も前の話、とか、ありえないようでありえそうな設定群が秀逸です。
元金融研究の第一人者だったユーセフ(冷酷)、若手AI研究者のリュセ(優秀)といったキャラに囲まれて、アンドロイドからもバクテリアからも借金を取り立て、どこまででも追いかけます。主人公の受難の日々は、笑えて感動します。

『変な絵』双葉社 雨穴

「変な家」で大ベストセラーになった作者の2作目。変な家は、間取りから住んでいる人の行動を推理する、という視点がとても面白く、最後にいろいろとひっくり返す落ちもあってよかったんですが、おじいさんや甥の強引さが少し引っかかってはいました。
2作目の本作は、かなりパワーアップしてます。
複数の絵にまつわる物語が交錯して、最後に収斂する構成はお見事です。犯人逮捕のきっかけとなったのは、犯人が元刑事を刺したから、なんですが、安易になぜ刺してしまったのか、とは思いました。しかし、そんな細かいところを気にしなければ十分に面白かった作品です。

『検察官の遺言』早川書房 紫金陳

中国の作家による邦訳作品です。
大学の実習で田舎の学校に来た青年が、児童を食い物にされていることを知り、正義感で突き動くが自殺に見せかけて殺されるまでが序章、
その後、若い検察官が最初は及び腰だったがこちらも正義感で突き動くのが中盤、
しかし、そのことにより、職を失い、えん罪で逮捕され、それでもあきらめずに、刑事、監察医、弁護士(最初の青年の担当教授で彼はやめておけと常に言っていた)が協力し、自殺を殺人に見せかけて、弁護士を逮捕させ、騒ぎを極力大きくして、多くの人が知るようになってから、真実を明らかにする、というストーリー。ほんとによくできた話でした。
最後は関係者が次々と不審死をとげるんですが、あとがき解説では、中国で実際に起こった事案をモチーフにしてるのだとか。なので、これを読んだ中国の人は、「ああ、あの事件のことね」と分かるのだとか。

『悪文』角川ソフィア文庫 岩淵悦太郎

昭和35年(1960年)に出版されたもので、平成28年(2016年)に文庫化された本ですが、今でも内容は全く色あせません。新聞記事も悪文として引用されているので、容赦ないですね。
現天皇陛下が生まれたときの新聞記事の誤用が紹介されていたりで面白いです。
今では普通に使われていると思う「毎日のお手入れ」は、誤用だそうです。

『明朝体の教室』Book&Design 鳥海修

游明朝などのフォントを開発した作者による、フォントの作り方の解説本。
これほどのノウハウを提供しても大丈夫なのかと思うくらい、惜しみなく、あますことなく伝えています。フォントを作るときに、ここまでこだわって作っていたのかと驚愕します。
錯視とか、黒味とかを考慮して縦線や横線を傾けるとか、わずかに削っていくとか、太さを変えるとか、中心をずらすとか、、、ノウハウが分かったとしても、私には到底真似できません。。。

『二〇三高地』角川新書 長南政義

日露戦争における満州軍第三軍司令官乃木希典の再評価本です。
司馬遼太郎「坂の上の雲」は連合艦隊参謀の秋山真之などが主人公で、小説としてとても面白いのですが(新聞の連載小説だとは思えない完成度!)、こと、乃木希典に対しては、無策に要塞に兵士を突撃させ機関銃の餌食にさせた、とんでもない「愚将」として描かれています。
作者は、旅順開戦から二〇三高地の奪取(旅順開放)に至るまでを、戦闘の記録を元にその時々の「判断」がどうだったのかを再評価しています。それによると、最も悪影響が大きかったのは、大本営の「準備不足」であり、砲弾の数、砲弾の性能(要塞戦に適した)、要塞戦の内容、スピードなど。これらが不足していたため、しわ寄せは現場に行き、肉弾戦を強いられることになったとのこと。
1回目の総攻撃の犠牲で要塞戦を学習し、その内容を反映して2回目、3回目と精度を高めていった、その時々の判断には間違いもあったが、限れらた情報の中では仕方のない部分もあり、概ね判断は正しいものであった、なによりも、自ら前線に赴き士気を高め、統率力を備えていた、私利私欲がなく戦後は自費で遺族の面倒も見ていた、など、
作者による評価は、なにより負ける戦争を勝利に導き、国家存亡の危機を救った「近代日本史上稀有な名将」なのでした。
この本を読むまでは「坂の上の雲」の乃木希典しか知りませんでしたが、別の見方では「名将」ともなりうるということで、いい本だと思います。

『日本的雇用システムを作る』東京大学出版社 梅崎修他

雇用に関して、残存する資料と関係者への取材で、その当時のことを立体的に浮かび上がらせるという本です。ちょっと時代が昔過ぎるのと、では今後どうなるか、という考察はないため、歴史書的に読めます。
勉強になったのは、組合には大きく2つあり、生産性向上を認めないか、認めるかで、大きく分かれるというのを知ったことでした。
前者は(生産性向上を認めない)
・自分たちが欲しい給料を経営者に要求する、その要求を叶えるのが経営者の役割と考える
・要求に応えるまでストライキなどで戦うし、場合によっては雇用止めや倒産も辞さない、なので戦闘的。
後者は(生産性向上を認める)
・労使で協力して生産性を向上し、まずは利益を拡大する。その利益の分配で戦う。
・ストライキをすると、生産性が落ちるので労使ともに本音ではストライキはやりたくない、平和的。
後者の立場である生産性向上運動とは、生産性の向上によって雇用を安定し、労働時間を短縮し、雇用の増大するということ。その成果は、労働者の給料だけではなく、物価引下げ(消費者に還元)、労働条件向上(職場環境改善)、設備の更新(企業に還元)のため、労働者、企業、消費者に公正に適正に配分する。その配分を決めるのが「労使協議」ということでした。個人的にはこの考えがすっと入ります。

その他の本

お勧めとまではいかないかもしれませんが、面白かった本のご紹介です。

『Q』小学館 『スワン』角川文庫 『爆弾』講談社 呉勝浩

「おれたちの歌をうたえ」がとんでもなく面白かった作者の作品群です。
・Q
すごい踊りを文字で表現するとするとどうなるか、についてかなり追及されたと思います。キュウはとにかくすごい踊り手でして、その表現は見事です。ただ、アクアラインを封鎖したイベントが世界を変えるようなことなのか、ハチがなぜキュウと同様に魅力的だと百瀬とか鳳プロは感じたのか、結局ロクはハチに対してどう思っていたのか、その後ジョーさんは社長になったのか、などいろんな伏線が回収されておらず、ちょっと消化不良ではありました。
・スワン
スワンというショッピングモールを舞台にした無差別殺人があり、その舞台裏でどういうことがおこっていたのか、を紐解く作品でして、レストランの最上階で撃たれた子供を盾にして自分を守ったライバルが自殺しようとしたのを止めてその銃弾が目にあたった、という秘密を守り抜こうという話です。あとがきを読むと、作者はプロットしない、そうでして、事前のプロットなく、ここまで構成できるというのはすごいなと思います。
・爆弾
「スズキタゴサク」という浮浪者が警察のエリートと知恵比べをする、いう話でして、爆弾のありかをスズキはクイズで出していきます。ただし、大規模に仕掛けられた爆弾は(自分で仕掛けてはいないので)スズキには分からず、爆弾計画を知ってから追加で仕掛けた、という話。最初に尋問した警察のエリートの心象描写(黒い虫が体にわいて・・)は私には理解(感情移入)が難しく、追い詰められてスズキの指を折ってしまうのですが、なかなかついていけなかったです。

『マリーナ』集英社文庫 カルロス・ルイス・サフォン

「ゴシック」というのはこういう文章で物語なのかと思わせる文章力でした。
少年と(病で最後は亡くなる)少女とが1960年代バルセロナを舞台に謎を追う物語でして、高度な義手を作る技術者がやがてあらゆるパーツを作れるようになり、死んだ人間もよみがえり、自分自身もパーツに換装して理性を失っていくが、最後は愛する妻と共に焼ける、というストーリー。
切ない物語です。

『レモンと殺人鬼』宝島社 くわがきあゆ

「このミス」2023大賞。
猟奇的な連続殺人と、そこに巻き込まれた家族、犯人、周囲の人、それぞれの関係性と物語展開が、ポンポンとひっくり返していく、こう思っていたけど、こうだった、リズムよく読ませていきます。
前歯のない姉が主人公、父は誰に殺されたのか(犯人は猟奇殺人を犯す少年で服役後に失踪)死んだ妹はなぜ殺されたのか(妹が少年を殺し父親に殺された)、母もその父親に殺された、父親は学校の警備員に化けていた、その他本筋には関係ないが読者をミスリードさせるために関わってくる人々、といった登場人物でした。

『無人島ロワイヤル』双葉社 秋吉理香子

喫茶店のマスターが遺産として引き継いだ無人島に常連客が招待されたが、一夜明けたらマスターとクルーザーがなくなっていて、生き残りだけが帰れるというゲームが始まる・・という話。最も生き残れなそうな人が最後に残るというのはいいんですが、善人も死んでしまいますので、あんまり後味はよくないかな。。。

『7月のダークライド』ハーパーブックス ルー・バーニー

最低限ながらも暮らしに満足していた主人公視点で語られる物語。ある日、タバコの押し付け跡がある子どもを見た主人公は、その子どもたちを助けるべく、少しずつ動き出し、最後はアジトに乗り込んで助け出す、という物語。主人公視点で「そうだよね?」といった文言がたびたび出てくるのが新鮮で、説得力があります。
結局、悪徳な弁護士が何をしていたのか、なぜ子どもを虐待していたのかが分からず、主人公も助からないので後味はよくないのですね。。。

『死んだ山田と教室』講談社 金子玲介

第65回(2024年)メフィスト賞受賞作品。
交通事故でスピーカーに取りついた山田をめぐる物語。最初はみんなに慕われていた山田なんですが、徐々にだれも寄り付かなくなり、最後は本当の親友だけが山田の想いを叶えます。最後に、死の真相、とりついてしまった真の理由、成仏させる方法が明かされます。展開はいいんですが、物語の中身の9割が馬鹿話でして、そんなに量はいらないかなと思いました。

『密室狂乱時代の殺人』宝島社 『密室偏愛時代の殺人』宝島社 鴨崎暖炉
密室黄金時代の殺人(2022年このミス大賞受賞作品)から続く2作目、3作目です。登場人物たちは同じ。1作目はまだドアを外したり液体窒素を使ったりといったトリックなんですが、2作目では家をつぶしたり、クレーンで持ち上げるというスケールの大きなトリックが展開します。3作目ではさらにスケールが大きくなり、村ごと真空状態にするとか、トンネルごと移動させるということになります。シリーズに共通しているのは、簡単に人が死んでしまい、それが軽く緊迫感がない、ということでして、大量に出てくる密室トリックを楽しむ、いうものです。死体は簡単には運べないだろうとか、氷はどこで作って液体窒素はどこから調達するのかとか、その他工具類は?とかいろいろと疑問はわくのですが、そのあたり割り切れれば、けっこう楽しめます。

『スターシェイカー』早川書房 人間六度

第9回(2021年)ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作品。
テレポーター同士の戦いは熱量が高く迫力満点で、2万体のクローン、宇宙の喪失というスケールの大きさはまさにSFです。最後は異世界に飛んだ主人公が宇宙空間に帰ってきて恋人のテレポーターが迎えに行くというハッピーエンド。ストーリーとしては、人間心理といいますか、なぜそう行動するのか、というのがよく分からず、少し薄味でした。

『リサーチのはじめかた』筑摩書店 トーマス・S・マラニー

研究を始めるにあたり、そのテーマはどうやって決めればいいのか、というのを順を追って解説した本です。要約すると、以下のような順番で検討すればよいということでした。
・自分のテーマに関する検索結果で目に飛び込んだリストと、気になった理由を書き出す
・同様に、退屈だと感じたリストと、その理由を書き出す
・そのテーマに関して、ささいで具体的な知りたいことを最低20個挙げる
・なぜその問いに気づいたのか、その前提、思い込みを書き出し、その思い込みを、残す、捨てる、分からないに分類、ただし捨てる、もまだ捨てない
・問いを俯瞰した時に、共通した関心ごとは何か、より高レベルの問いを抽象化する
ということでした。

『限りある時間の使い方』かんき出版 オリバー・バークマン

生産性を向上させて時間効率を向上したとしても、やれることには限りがあるし、効率化しただけ仕事がくるので結局理想は実現しない。そのため、やることを絞って、その他は捨てる勇気を持ち、絞ったところに集中することで満足度が高まり、幸せになれる、というものでした。

『残像』角川文庫 伊岡瞬

国会議員の息子が黒幕なんですが、その黒幕に容姿が似ている主人公が、元犯罪者(受刑者)の女性たちに巻き込まれる形で、追い詰めていく、というお話。

『訂正する力』朝日新聞出版 東浩紀

「ぶれないことがいいことだ」とされがちではありますが、世の中が変わっているのに、変化しないと生き残れない。過去を踏まえながら、解釈を変更し、訂正することが必要である。というお話。
議論の話であったり(議論とはお互いが変われることが前提)、リセットの話であったり(自分の体はリセットできない)、ルールの話(ルールを変えようというのは少数派だがリスクをとるというのが訂正するということ)、空気の話(同調すると訂正が出来ない)であったり、いろいろな話に展開します。

『経済学オンチのための現代経済学講義』筑摩書房 ダイアン・コイル

原題が「COGS AND MONSTERS」でして、個々の人間としての規則正しい歯車(COGS)を前提として経済学は発展してきたわけですが、実際はよく分からない巨大なもの(MONSTERS)が現実で、モデルと合わないことが多々ある、という内容。なので、邦題が本書とは全然あってません。
「経済学オンチ」というと「素人」ということなんでしょうけど、ある程度経済学用語を知っていないと内容的に全く歯が立ちません(何を書いているのか分からない)。
その内容ですが、構造的に書かれているわけでも、理論的に結果が書かれているわけでもなく、散文的に、現在の経済学ではこういうことが前提で設計されているが、実際はこうなので、課題はこうだ、というのが延々と続くので、けっこうモヤモヤします。
その中でも注力して書かれていたと思うのが、
・経済学では収穫逓減を前提としているが、デジタル社会では、限界費用がほぼかからない
・ネットワーク効果・外部性で、収穫は逓増
・しかし、収穫逓増を前提とするとモデル化が難しい
ということが述べられていて、それはそうだなと思いました。

以上、2024年に読んだ面白かった本でした!