中小企業診断士 実務補習の流れ(初回)

診断士

1日目~3日目まで

それでは前半戦をご紹介します。

1日目

事前に打ち合わせなどを行っていない場合、指導員が主導して自己紹介、診断先企業の説明、今後の進め方・スケジュールの説明、担当決め、などが行われます。

私たちのチームでは、それは既に実施されておりましたので簡単に終わり、午前中いっぱいをかけてヒアリングでの質問内容の整理を行いました。具体的には、各自で人数分印刷してきた質問内容を配布したのちに、
まず最初に班長の経営戦略の質問内容を紹介し、追加の内容をメンバーから聞き、
続いて財務の担当から、財務の視点での質問内容を紹介して、追加の内容をメンバーから聞き・・・
という順番で進めました。

ただし、全員が用意した質問全てを聞くと、とても時間が足りないことが分かりましたので、重要な経営戦略は厚めに1時間程度、そのほかの視点は重要な点のみ20分ずつ程度としました。

さて、食事をとり、午後からは診断先に訪問です。

製造業の現場ということで、先に工場を見せて頂き、その後、社長を前にヒアリングを行いました。
班長である私が質問した内容としては、おおざっぱには、以下のような内容でした。

・これまでの経営戦略について:
創業時や、先代の社長が取り組んできたこと
・現在の経営戦略について:
SWOTとファイブフォース
・将来の経営戦略について:
拡大するのか絞るのか、など
・社長の性格について:
譲れない価値観、など

これらの内容について聞いてゆくと、あっという間に1時間経ちました。なお、ヒアリングのポイントとしては、

これから何についてどういう順番で聞くのか、あらかじめ伝えておく

ことで、質問のカテゴリーがはっきりして行き来がなくなり、相手も見通しがつきやすくなると思います。私の場合は上記のとおり「過去-現在-将来の経営戦略の順番でお聞きます」と最初にお伝えしてからヒアリングを開始しました。

なお、私たちのチームの場合、そのほかの視点の質問も20分を少しずつ超え、最終的には終了時間の17時をオーバーしてしまいました。

2日目

次の日の土曜日は、最初に指導員からバランススコアカードのフレームワークについて講義がありました。

そのときはよく理解できてなかったのですが、後から振り返ると、

1.SWOTと社長の思い(経営理念等)から、検討の軸となる「めざすべき方向性」を導く
2.クロスSWOTから、各視点における課題=経営戦略目標(軸は方向性)を導く
3.各視点の経営戦略目標を実現するための具体的なアクションプランを導く

という流れになります。また後でご説明します。

まず最初に行ったのは、SWOTの整理です。指導員のアドバイスのもと、KJ法で進めました。
具体的には、

1.例えば「強み」について、3分間、各自で思いつくかぎり付箋に書き込んでいきます
2.最初の人は、付箋の説明をしながらホワイトボードの適当な位置に付箋を貼り付けます
3.次の人も、付箋の説明をしながらホワイトボードに貼り付けますが、最初の人と同じ内容の付箋ならば同じ場所に貼り付けます
4.以下、最後の人まで同様に行います
5.みんなでホワイトボードの前に集まり、付箋群に名前を付けます(技術力が高い、など)
6.同じ名前にカテゴライズされるなら、付箋群を一緒の位置にして群の数を減らします
7.これ以上まとめられなくなったら終わりで、付箋群の名前が「強み」になります。

同様に、弱み、機会、脅威についてもまとめていきます。これで一応、SWOTが完成します。あーだこーだやっていたら、14時くらいになっていました。

続いて、ここからが重要なクロスSWOTです。
例えば市場には機会(O)があるのに自社の弱み(W)で対応できていないなら、弱点を強化する必要があり、それが経営戦略目標=課題になります。ですので、経営戦略目標を浮かび上がらせるためには、クロスSWOTが必要です。出てきた経営戦略目標は、何の視点(財務、顧客、業務システム、人材と変革)のものなのか、割り当てていきます。
最初にSとOでクロスを行ったのですが、Sが10個、Oが10個くらいあり、単純には10×10=100通りのクロス分析となります。巻き気味で行ったにもかかわらず、1時間以上かかり、次にWとOのクロスを少しやって終了となりました。

こういった作業をしながらも、全体を貫く軸、将来のめざすべき方向性となるものについては「新工場の建設」ではないか、そこでは様々な課題を解決できる、という話になり、各自で持ち帰り、担当の各視点で報告書を書いてゆくことになりました。

報告書のひな形としては、各視点において、

1.現状分析
2.問題点
3.課題(経営戦略目標)
4.具体的な解決策(アクションプラン)
-短期的取り組み
-長期的取り組み
という流れとしました。
水曜日に、中間報告としてZoomで集まることにして解散となりました。

3日目まで

私(=班長)の作業として重要なのは、
各自の視点における経営戦略目標=課題と、クロスSWOTの整合が取れているか
です。
クロスSWOTで現れない課題があった場合、SWOTに抜けがある
ということになります。
ですので、次の日の日曜日に真っ先に実施したのが、SWOTの再整理でした。
改めてじっくりと眺めて、これはSではなくてOだとか、これとこれは同じことだとか、まとめていき、最終的にSWOTの各要素を6つずつに絞り込みました。
これを月曜日の朝にメンバーに共有しました。
続いて月曜日の夜に6×6×4=144通りのクロスSWOTを行い、課題となりそうなところをマークして、火曜日の朝にメンバーに共有しました。各自で執筆中の課題と整合が取れているか確認してもらうためです。
火曜日の夜~水曜日の朝には自分のパート(主に総括提言)を一通り作りました。
なお、各視点での資料作成にあたっては、クロスSWOTで課題は出るものの、
課題解決のために、具体的に何をするのか
が重要です。ですので、ネット検索なりを駆使しながら、具体的な取り組み(アクションプラン)を書き下ろしていくこととなります。
さて、水曜日の夜にメンバーが集まって各自の作成中段階の資料を説明しあいました。
そこで議論をした結果、軸となるのは「新工場の建設」ではなく「組織風土の改革」だよね、という話になり、「従業員」「社長」「組織」の強みや弱みを軸として、各視点の課題を展開していこう、という話になりました。
ですので、めざすべき方向性=軸は「組織風土の改革」とし、総括提言もその内容を意識したものに書き換えました。
各視点を担当するメンバーも、その軸を意識して構成をし直すこととなりました。
報告書に主軸があると、一貫性が増し、分担した時にもぶれにくくなります
なお、水曜日の時点で進捗が著しく悪いメンバーがいた場合は、班長等がサポートに回ることになろうかと思います。
次に集まるのが土曜日ですので、あと木曜日と金曜日でおよそほぼ完成の域まで持っていきます。